夫、二人の子を一度に亡くし、「次は私の番」と清。

7月 6, 2010 - 11:54 am コメントは受け付けていません。

 蓮如上人の建立された吉崎御坊(福井県)からほど近い山十楽村に、
夫・与三次と妻・清の夫婦が暮らしていました。二人の子供に恵まれ、
姑も健在の五人家族で、百姓とはいえ、幸せを感じながらの毎日でした。

 ところが、与三次は、突然、病に倒れ、この世を去ってしまいます。
苦楽をともにしてきた夫を亡くし、大黒柱を失った清でしたが、子を
養わねばならぬと、女手一つで、懸命に働き始めます。

 しかし、今度は、その二人の子までが相次いで病死してしまった
のです。立て続けに襲った身内の不幸に、わが身の無常を知らされた
清は、深刻な不安にさいなまれます。
「あまりに、むごい……。一体、何を明かりに生きればいいのでしょう
か。次は、私が死ぬ番。死ねばどこへ行くのでしょうか?」

 ちょうどそのころでした。「あなたの暗い心を晴らしてくださる方は、
蓮如上人しかおられない」と、清が知人から聞かされたのは……。

 当時、吉崎御坊には、近郷はもとより、東北や近畿地方からも
参詣者が参集し、大変なにぎわいを見せていました。清は、夫の命日に、
吉崎御坊へ参詣したのです。

「人の一生は、漆黒の天を走る稲妻のように一瞬で過ぎていきます。
いつ、どんな病気で死ぬか分からないし、明日まで生きておれる保証すら
ありません。生涯かけて、営々と積み上げてきた地位、名誉、財産も、
妻、子供も、臨終には、何一つ、明かりにはなりませんよ。みんな、
夢、幻のような、儚い楽しみでしかないからです。真っ暗な心を抱え、
一人ぼっちで、泣き泣き、三塗の大河を渡らなければならない時が、
必ず、あります。だから、後生は一大事なのです。絶対の幸福に
救い摂ると誓われた弥陀の本願を聞き抜きなさい」

 蓮如上人のご説法は、清の心に、深く突き刺さりました。すぐに清は、
真剣な聞法に身を沈めます。
『願慶寺縁起』は、「立所に信心決定して無二の信者となりき」と伝えて
います。

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